台湾は友人が多く住んでいることもあり、たまにふらっと出かけたくなる大好きな国です。食べ物も美味しく、人々も優しく、私にとって一番リラックスして過ごせる身近な外国です。これまで新幹線の通る西部や東部のリゾート地の花蓮などを訪れましたが、行く度にその魅力にはまっていきます。
皆さんも、『千と千尋の神隠し』の舞台として有名な「九扮」は旅行会社のCMなどでご覧になってご存知なのではないでしょうか?台北発のツアーだと、この「九扮」と天燈上げで有名な「十分」がセットになっていることが多いのですが、今回は最近人気上昇中の「十分」について取り上げたいと思います。
十分は台湾北部、新北市平渓区に位置する、静かな山間にある小さな町です。昭和の時代を彷彿とさせるどこか懐かしい雰囲気に、ゆったりとした居心地の良さを感じることができます。
十分はかつて炭鉱で栄えた町でありながら、時代の流れとともにすっかり寂れてしまいました。そこで、これではいけない、と地元住民が立ち上がり、もう一つの地域資源である天燈(ランタン)を使って町おこしをしてきた、という歴史があります。ガイドさんの説明によると、ここ十分が台湾の天燈づくりの発祥の地だそうです。
毎年行われる天燈上げのフェスティバルでは夜空にたくさんのランタンが登っていき大変幻想的な景色を見る事ができます。さすがにフェスティバルに合わせて行くのは難しいけれど、普段行っても観光客が沢山の天燈を上げているので存分に楽しむことができます。
十分へのアクセスですが、ハイヤーかバス(日本から予約できるツアーもあります)で台北市内から約40分の道のりです。大都会の台北市を抜けしばらく走ると雰囲気の良い山間の町が見えてきます。空には天燈が浮かび、気持ちも高まります。ちなみに、火が燃え尽きて落ちてきた天燈は、業者やボランティアの方がきちんと回収しているそうです。
私は今回バスツアーを利用しました。バスツアーだとハイヤーのようにフレキシブルに動けないのが難点ですが、車内でガイドさんからランタンの色の意味合いや選び方、十分・九扮の歴史などを伺えて、それはそれで良かったかな、と感じました。価格は人数にもよりますが、2名参加ならバスツアーもハイヤー利用も同じくらい、4名参加ならハイヤーの方がお得、といった感じです。
さぁ、バスが駐車場につき、ランタンを飛ばす線路まで5分ほど歩きます。日本では考えられませんが、実際に電車の行き交う線路の上でランタンを飛ばすのです。ノスタルジックな街並みを抜けると沢山のランタン屋さんが線路の脇に並び、昔の熱海のようで、昭和生まれの私にはとても懐かしい感じがします。
お店の中には、まるで洗濯物のようにランタンが干されて(?)いて、自分の選んだランタンの前に立ち、それぞれ願い事を書いていきます。ちなみにランタンの色は単色、4色、8色などから選ぶことができます。それぞれの色に意味があり、たとえばオレンジは愛情運アップ、水色は仕事運アップだそうです。カップルやグループで1つのランタンを選ぶことが多いようです。
書き終わると、店員さんが線路で待機する別の店員さんにランタンを渡します。外の店員さんは二人一組なのですが、そのオペレーションの素晴らしさに舌を巻いてしまいました。
一人の店員さんはがランタンに火を灯し、客に「ここを持って」「こうして」「はい、笑顔!」と指示出しをします。そしてもう一人の店員さんからは「スマホ、iPhone!」と言われ、言われるがままスマホ手渡すと、全ての面(8色でも4色でも4面です)を持つ客の様子をハイスピードで写真撮影。さらに、ランタンから手を放し、天に昇っていくところまでを動画撮影までしてくれるのです。あまりにテキパキと無駄のない動きに感動すら覚えました。しかも、さすが撮り慣れているだけあって、写真や動画の構図も写りもバッチリです。
私のランタンもゆっくりと天高く昇って行きました。
翌日、台北に戻り、台湾人の友人に十分で天燈上げをした話をすると、やはり、ここ数年で天燈上げは観光客の間でブームになっているようだ、とのことです。地元住人のアイデアが功を奏し、年々観光客は増加の一途をたどっているようです。ランタンの文字を見ると韓国やタイ、日本からの観光客が多いようでした。
それにしても、どの国の方もランタン一杯に願い事が書き込まれていました。自分のランタンも改めて写真で見返すと、その煩悩にまみれた、というか欲深い(?) 感じに唖然としてしまいます。でも、とても楽しい心に残る体験でした。
実際に十分を訪れ、もともと炭鉱の町として栄えた町十分に住む人々が、時代の流れを受けとめ、環境にも配慮しつつ、新たな活路を見出しているというそのしなやかさがとても素敵だと感じました。
台湾ではランタンに火をともし、天に飛ばすというその行為で願いが叶うと言われているそうです。(実際に天高く飛んでいかなくてもそれはそれで大丈夫なようです。)
みなさん、台北に旅行される際には九扮とあわせて十分で天燈上げ体験をされてはいかがでしょうか?
私の願いも叶いますように。
(T)