クラフトビールと地域づくり

 春を迎えビールが美味しい季節になってきましたので、最近人気のクラフトビールと地域づくり、この両者を結び付けて実践している取り組みを紹介したいと思います。
 今年の2月に埼玉県所沢市に本社・工場を構える『株式会社ベルビア(http://www.bellbeer.com/)』を訪問させていただき、共同代表のおひとりである吉村英二氏からビール事業への想いを伺うことができました。
   ・2012年1月:法人設立
   ・2013年6月:ビール製造免許交付(所沢税務署管内初)
   ・2014年2月:自社醸造ビール「野老(ヤロウ)ゴールデン」発売開始

 当社が標榜しているのは「地元住民参加で生産した地元産原料を、地元で醸造し、地元で消費する、地産地消のコミュニティ・ビール事業を展開し、地域づくりの結節のひとつとなることを目指す」ということです。
 ビールでそんな大仰なと思うかもしれませんがこの背景には、長らく所沢は東京のベッドタウンと化していることから地元意識が希薄であるのに加えて、所沢流入第1世代の高齢化や地場産業である農業の衰退などにより、経済基盤や地元意識の希薄化がさらに進行することが考えられます。

 このような状況から、もともと麦栽培が盛んな地域であり、麦作は素人でも比較的簡単に栽培ができること、ビールは仲間同士賑やかにわいわいと飲むものであることから、ビールづくりを通して地域づくりにも積極的に関わる『コミュニティ・ビール事業』が始まりました。
 特長的な点は、単なる理念だけでなく「所沢麦酒倶楽部」という会員組織を作り、原材料生産に関わることでのファンづくり、さらには協力店(ビール販売店)を消費者との重要な接点に位置付けるなど、消費者と協力店の双方にメリットが生まれる仕組みを築いているところにあります。
 まだ自社醸造を開始して1年数ヶ月のビールメーカーですが、新しい地域づくりの方法を行動に移していますので、これからの所沢の変化が楽しみです。
Photo_small

 

 最後に、小規模ビール製造の動向に触れたいと思います。
 平成6年4月の酒税法改正により、ビールの最低製造数量基準が2,000キロリットルから60キロリットルに引き下げられたことで、小口醸造のビール(いわゆる「地ビール」)の製造が可能となりました。
それ以降、各地で地ビール参入が相次ぎ、下図のように近年はほぼ横ばいという状況です。醸造技術の進歩や消費者の嗜好変化にもより、 現在は地ビールをメインに扱うbarもあり見直されつつありますので、野老ゴールデンのように個性的なビールがより一層楽しめるようになることでしょう。
地ビール

 小口醸造のビールを一般的には「クラフトビール」(もともとのクラフトの意味は技術・技能・手工業など)と呼ばれていますが、株式会社ベルビアを始め、全国各地での原料・地域・ビールとまさに「クラフト」なものづくりに今後も期待したいと思います。(M)